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《楽曲解説》
例えばcantabileという言葉が音符に添えられている場合、それが意味するものは「器楽の旋律ではあるが声で歌っているように」ということであろう。しかしいったい「歌うように」とはどのような状態なのであろうか?
そもそも、音楽の起源を説明する上で、言葉の延長として歌が生じたという説があり、最も原始的な音楽表現媒体であったと考えられる「うた」は、音楽である以前に宗教的「手段」であっただろう。また、「歌う」という行為によって共同体の確認をしたり、オペラアリアに見られるような感情の強調をしたり、声楽曲ではなくとも「歌のある音楽」などと言われる場合など、「うた」は様々な歴史的・社会的背景と文脈を持つ。
さて、そのような広範な意味を持つ「うた」であるが、8本のトランペットのための『カンタービレ』では「声の音響」に注目し、人間の口に相当する楽器のベルに様々な種類のミュートを付けて得られる母音に、装飾的な音、効果音、不確定なピッチなどによる「子音」を与えることによって、疑似的な「言葉」を生成させた。一方、音楽様式的側面では、ホモフォニー、モノフォニー、或いはヘテロフォニーなど、様々な要素が見られるが、それは時に、仏教音楽の「声明」やキリスト教の古い音楽様式との共通性を示唆するであろう。
この作品では、「カンタービレ」という言葉から引き出されるものをトランペット合奏という形で表したものであるが、その意味では非常に「歌唱的(cantabile)」である。そしてまた、そこにはルネッサンス以降という意味での「近代」に生きる私にとって、それ以前の音楽に対する強い意識があるように思う。
1998年アンサンブル「トランペット・カンタービレ」のために作曲。(田村文生)
タイトル:カンタービレ
作 曲:田村文生
グレード:5
演奏時間:約9分
楽器編成:
B♭Trumpet 1/2/3/4/5/6/7(Flugelhorn持ち替え)/8(Flugelhorn持ち替え)
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