【曲目解説】
「軌道共鳴」とは同じ天体の周りを公転する2つ以上の天体が互いの重力による影響を受け合い、それぞれの公転周期が簡単な整数比(1:2や1:2:4など)になる現象のことである。この作品は、8つのパートが各部分ごとに様々な組み合わせによる3つ、ないし4つのグループに分かれ、それぞれのグループが異なった趣のフレーズを同時に展開することにより、それぞれのフレーズを特徴付ける音型やアクセントが時には全く無関係にずれた位置に起こったり、また、時には偶発的に同じ位置に、まるで惑星直列のように重なり合って、大きな音楽的なアクセントを形成したりしつつ、音楽が展開してゆく。(ただし、それぞれのフレーズは天体の運動のような厳密な周期性を持っているものではない。)
また、一転、中間部分では和声的な調和の中で音楽が進行するが、特にトロンボーン3重奏の長3和音の連続によるコラール部分はブラームスの交響曲第4番、第4楽章の有名なトロンボーンによるコラールの部分のような、調和と安らぎに満ちたサウンドをイメージしている。
各部分においての分割された小アンサンブルが、他のグループとは一見全く無関係に演奏しているように見えるが、それぞれの小アンサンブルが同じ時間軸の中で、それぞれのプレーズの特徴を捉えつつ、精度の高いアンサンブルを展開することで、8人それぞれの息遣いが離合集散を繰り返しつつ、時として巨大な邂逅を生み出す、という感動を味わって頂ければ幸いである。
それは我々人間同士が「自分は自分」あるいは「他人は他人」と自分に言い聞かせつつ、互いが意識的にか無意識にか、結局互いの行動や思考に影響されつつ、社会としての調和を目指していることに、似ている。(三澤 慶)
楽器編成
1st Trumpet in B♭ (/Flugelhorn in B♭)
2nd Trumpet in B♭ (/Flugelhorn in B♭)
3rd Trumpet in B♭ (/Flugelhorn in B♭)
Horn in F
Euphonium (/Trombone)
1st Trombone
2nd Trombone(Bass Trombone 可)
Tuba