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・内容:スコア兼パート譜一式
・演奏時間:約10分
編成
3 Clarinets
序文
風は太古から、それこそ地球誕生の時から発生し、形を変え、速度を変え存在し続けている。
盟友松下功がクラリネット3本で風を、それも東からの風「東風」を表現する曲のスケッチとそれに関わるFrage(質問)を携えて、当時西ベルリン市Schöenebergの拙宅を訪れたのは1983 年のことであった。広陵とした大地をふきぬける風(激しい息)で始まる、そして風はまるで生命を得たように音になり発展し、日本の竹林を思わせるカデンツァを経て重音奏法が風を宇宙空間へと導く。その後風は生まれ故郷に去っていく。
私は「東風」を松下功の傑作の一つと捉えている。 3人での初演は当時西ベルリン市、芸術家の集うカフェ・アインシュタイン(Cafe Einstein)でベルリンフィルメンバーのワルター・ザイファルト(Sayfarth)、マンフレッド・プライス(Manfred Preis)と四戸世紀で行われた。〈四戸世紀〉
作曲者による解説
この曲は、西ベルリン在住の日本人・ドイツ人の作曲家、演奏家、画家、書家、舞踏家よりなる『アンサンブル東風・ベルリン』の第1回公演のために、1983年に作曲された。このアンサンブルは異なった芸術家達が、ある時は融合し、またある時は自らの立場を主張しつつ「空間に於る音と視覚の融合」を試みようとしている。多様化する現代社会に於て、空間に対する認識が新たなものとなり、現代の音楽もまた、時間空間を改めて認識させる重要な要素である。
この曲「東風I」は、異なった芸術家達の集まるその空間に於て、私なりの「視覚的時間(Optical Time)」を提示したいと考えた作品である。題名が示すごとく、風の中から音は紡ぎ出され、それぞれの音は互いに干渉しあう流れへと発展する。そして、ソロ・クラリネット(B 管)によるカデンツァの後、3本のクラリネットはそれぞれ重音による位相空間を形成し、やがて2本のクラリネット(A管)による『東風(こち)』の呟き(実際に発音する)のうち、音は風の中へと去っていく。全体は1 : 2 : 3というシステマティックな時間計算を用いることによって、視覚的時間という概念を構造的に変換しようとしている。
この「東風I」は1人の奏者によって、あらかじめ2本のクラリネット(A管)を録音したテープとソロ・クラリネットという形態で演奏することも出来る。 〈松下功〉
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